2002年のFIFA日韓共催サッカーワールドカップは、どちらの国も単独開催を望んでいたのにFIFAが決めた共催でした。戸惑う人が多かった中、宮様はそれを日韓両国にとって天からの贈り物と仰いました。
そして新聞のインタビューでも、「日本と韓国は残念な関係が半世紀も続いているが、両国間の千年を超える永い文化交流の歴史においてワールドカップの共同開催ほど大きな仕事を一緒にすることは初めてである。これを成功させ、それをきっかけに、友好関係や交流がさらに深まる形をきっちりつくらなければならない。過去のことを忘れてはいけないが、後ろばかり向いていては前に進めない。21世紀は両国のためだけではなく、これからのアジアの繁栄のため、世界の繁栄のために、一緒に前に進む世紀にして欲しい」と仰せになっています。
宮様の最後の海外ご訪問だったのが、このサッカーワールドカップです。宮様の御意志を継ぐ形で日韓の青少年交流を支援するこの基金は、2008年12月に設立されました。それから10年、ここにお集まりいただいた皆様の御支援により、ささやかながら民間交流促進の役割を果たして参りました。
この顕彰事業を通じて日本と韓国の間には、青少年による未来を目指した草の根交流が、多く存在することを知りました。後で具体的な紹介がございますが、高円宮賞を差し上げる4件の交流事業は、いずれも民間交流ならではの純粋で爽やかな草の根活動です。
真の国際交流とは国や組織単位ではなく、その国や組織を形成する一人一人の人間が一歩ずつ進めていくものです。国としての立場がたとえどのようなものであっても、国民同士は強い信頼の絆に結ばれることが、最も重要と考えます。日本と韓国は古来、密接な関係にあり、人や文化が海峡を越えて行き来いたしました。隣国として多くの価値観を共有する大切なパートナーです。
信頼の絆は一朝一夕に築き上げられるものではありません。しかし、一旦築き上げられた信頼関係はそう簡単に崩れるものではありません。相互理解には、普段からの交流が必要です。
地道な草の根活動によって日本と韓国の人々の出会いの場が広がり、交流の絆が更に強くなることを期待すると共に、ご列席のみなさまには、一層の力添えをお願いいたしまして、私の式典に寄せる言葉といたします。