日韓 草の根交流・第十回顕彰式典(2018年12月13日)

「一般財団法人 高円宮記念日韓交流基金」の
日韓の青少年・草の根交流を顕彰する
第十回顕彰式典が2018年12月13日に、
韓国文化院で行われました。




「高円宮記念日韓交流基金」の第十回顕彰式典が東京・四谷の韓国文化院で行われ、「高円宮賞」4件が授与されました。


 


◆高円宮妃殿下のおことば◆

2002年のFIFA日韓共催サッカーワールドカップは、どちらの国も単独開催を望んでいたのにFIFAが決めた共催でした。戸惑う人が多かった中、宮様はそれを日韓両国にとって天からの贈り物と仰いました。

そして新聞のインタビューでも、「日本と韓国は残念な関係が半世紀も続いているが、両国間の千年を超える永い文化交流の歴史においてワールドカップの共同開催ほど大きな仕事を一緒にすることは初めてである。これを成功させ、それをきっかけに、友好関係や交流がさらに深まる形をきっちりつくらなければならない。過去のことを忘れてはいけないが、後ろばかり向いていては前に進めない。21世紀は両国のためだけではなく、これからのアジアの繁栄のため、世界の繁栄のために、一緒に前に進む世紀にして欲しい」と仰せになっています。

宮様の最後の海外ご訪問だったのが、このサッカーワールドカップです。宮様の御意志を継ぐ形で日韓の青少年交流を支援するこの基金は、2008年12月に設立されました。それから10年、ここにお集まりいただいた皆様の御支援により、ささやかながら民間交流促進の役割を果たして参りました。

この顕彰事業を通じて日本と韓国の間には、青少年による未来を目指した草の根交流が、多く存在することを知りました。後で具体的な紹介がございますが、高円宮賞を差し上げる4件の交流事業は、いずれも民間交流ならではの純粋で爽やかな草の根活動です。

真の国際交流とは国や組織単位ではなく、その国や組織を形成する一人一人の人間が一歩ずつ進めていくものです。国としての立場がたとえどのようなものであっても、国民同士は強い信頼の絆に結ばれることが、最も重要と考えます。日本と韓国は古来、密接な関係にあり、人や文化が海峡を越えて行き来いたしました。隣国として多くの価値観を共有する大切なパートナーです。

信頼の絆は一朝一夕に築き上げられるものではありません。しかし、一旦築き上げられた信頼関係はそう簡単に崩れるものではありません。相互理解には、普段からの交流が必要です。

地道な草の根活動によって日本と韓国の人々の出会いの場が広がり、交流の絆が更に強くなることを期待すると共に、ご列席のみなさまには、一層の力添えをお願いいたしまして、私の式典に寄せる言葉といたします。



開会の言葉

柳井 俊二 理事長

来賓祝辞

羅 鍾一 名誉顧問
(元・韓国特命全権大使)

来賓祝辞

金 敬翰
韓国大使館公使

来賓祝辞

安藤 裕康
国際交流基金理事長


◇◇受賞事業◇◇
■日韓親善障害者スポーツ・文化交流事業(スポーツ・文化)

代表者: 日韓障害者スポーツ文化交流会ふくおか(貴島 純孝 事務局長)

<活動地域(活動年数)>
韓国ソウル市、水原市、釜山市 / 福岡県福岡市など(29年)

<活動内容>
障害のある者同士がソフトボールをはじめとする各種スポーツを通じて相互交流を図り、絵・書などの展示会等も併せ開催してきた。それを健常者である多くの青少年がボランティアとしてサポートし、青少年同士も交流。

<選考委員会・推薦者等の評価>
障害者自身によるスポーツ・文化の総合交流で、青少年の協力の下に、様々な活動を長期に亘り実施してきた。障害者の活動の背後には必ず健常者のサポートがあり、それが青少年にとってもよい社会勉強となっている。

<受賞者のひと言>
ソウルオリンピック開催の前年である1987年、仲間たちとともにソウルを訪問したのがこの活動のきっかけだった。現地の障害者施設で出会った人々との交流が印象深く、日韓交流の大切さを強く感じ、障害者の国際交流活動を始めた。それ以降、ソフトボールなどのスポーツ交流を行い、プロ野球の稲尾和久氏の協力を得て、「稲尾杯」を開催している。他にも、書・絵・写真などの文化交流も盛んで、日韓両国で作品展も開催した。

■日韓友好派遣(教育・文化・スポーツ)

代表者: 新潟県南魚沼市立塩沢中学校(青柳 義昭 校長)

<活動地域(活動年数)>
新潟県南魚沼市 / 韓国江原道平昌郡(30年)

<活動内容>
新潟県塩沢町と韓国江原道の観光協会同士がスキー場による交流を始め、塩沢中学校と道岩中学校との学校間交流及び地域交流に発展。スキー交流に加えて、ホームステイ、テンプルステイなどにより地域文化を体験する。

<選考委員会・推薦者等の評価>
お互い僻地かつ寒冷地にありながら、立地を活かしてスキー交流をはじめ、地元の文化体験や寺院での共同宿泊などにより直接交流し、地域に密着した交流をしている。また1年も欠かさず30年間継続してきた点を評価。

<受賞者のひと言>
1987年から31年間、一度も途切れることなく中学校同士の草の根交流を続けてきた。昨年8月に生徒とともに大関嶺中学校を訪問した際、太鼓の演奏やキレのいいKPOPダンスで大歓迎されたことが印象に残っている。生徒同士は、初めは戸惑っていたが、ホームステイを行なった後には、お互いに固く握手して、涙を流しながら別れを惜しんでいて、こうした交流活動の素晴らしさを強く感じた。

■韓日親善交流レスリング大会(スポーツ)

代表者: 釜山広域市レスリング協会(梁 勇治 名誉会長)

<活動地域(活動年数)>
韓国釜山市、大田広域市、全州市 / 茨城県、栃木県、群馬県など(中学生交流は31年、日本との交流は48年)

<活動内容>
1971年に日韓親善ジュニア・レスリング大会を行って以来、48年に亘って交流し、中学生を対象としたレスリング大会は31年間続けている。レスリングを通じて日韓の友情を育むと共に、教育の一環としてお互いに切磋琢磨する。

<選考委員会・推薦者等の評価>
ジュニア世代に海外交流の道を拓き、特に中学生に競技を通じて異文化の理解や国際親善を実地に教えてきた点は評価に値する。釜山のレスリング協会は篤志家の支援によって運営されており、指導者の熱意も素晴しい。

<受賞者のひと言>
教育・文化・スポーツ交流を通じて、真の日韓関係を築こうとされた高円宮殿下の崇高なお志を思うと、受賞の喜びだけでなく、責任の重さも感じている。これまでの48年間、釜山レスリング協会と日本中学生レスリング連盟は真心からの交流を続けてきた。両国の若者世代に夢と希望を与えてきたと思う。これからは「近いけれども遠い隣国」ではなく、地理的にも、そして想いも近い「近くて、さらに近い隣国」になれるよう努力していきたい。

■ソウル俳句会(文化)

代表者: ソウル俳句会(山口 禮子 主宰)

<活動地域(活動年数)>
韓国ソウル市他 / 日本からも投稿(23年)

<活動内容>
ソウルにおける俳句会の活動で、日本人主宰を中心に23年間活動している。日本人のみならず韓国の大学教授や日本教師も参加し、学生に俳句を教えると共に、日本文化を広く発信している。句会や句集の発行、コンテストなども行う。

<選考委員会・推薦者等の評価>
俳句を通じて日本独自の文化を韓国の人々に広く発信している点を評価する。日本語の微妙な ニュアンスは伝えにくいと思うが、韓民族の文化や個性を尊重しながら、韓国の青少年の間にも広がりを見せているのは意義深い。

<受賞者のひと言>
会が発足した時のチラシが今でも残っているが、そこにはっきりと「俳句を通しての日韓草の根交流」という言葉がある。25年経った今でも、草の根交流、日韓親善ということを会員一人一人が大切に思って、老若男女、皆仲良く活動している。韓国には四季があり、文化的にも日本と共通するものが沢山あるので、俳句を受け入れやすい国と言えると思う。近年、教育の一環として、韓国の学生達に俳句を教えている事例もあり、これからもさらに活動を広げていきたいと思う。