日韓 草の根交流・第一回顕彰式典(2009年12月10日)





 開会の言葉              ご挨拶            高円宮妃殿下のお言葉            来賓祝辞                来賓祝辞

     
渡邉 泰造 理事長         羅 鐘一 名誉顧問        名誉総裁 高円宮妃殿下      川端 達夫 文部科学大臣      権 哲賢 在日韓国大使


「一般財団法人 高円宮記念日韓交流基金」の日韓の青少年・草の根交流を顕彰する第一回顕彰式典が昨年12月10日に、韓国文化院で行われました。
本年度は日本と韓国の有力団体に推薦をお願いして38件の応募を頂き、地道な草の根交流であること、民間の善意に基づく活動で地域に定着していること、10年程度継続していること、などを基準とした選考委員会での公正な審議の結果、日韓の4団体が受賞しました。

◇◇受賞事業◇◇
芳洲の里 青少年交流事業 (文化)

受賞グループと代表者:東アジア交流ハウス雨森芳洲庵 (平井 茂彦 館長) 


<活動内容>
江戸時代に朝鮮との善隣外交に尽力した雨森芳洲のふるさとである滋賀県高月町を拠点とした地域交流で、中高生のホームステイ受け入れ・派遣、町づくりフォーラムの開催など、多彩な活動を展開。

<推薦者などの評価>
郷土の先人の志を引き継ぎ、わずか110戸の小さな農村で、館長を中心に地域を挙げた交流事業を展開。中学生の積極的な取り組みをはじめ、地域住民による全員参加の活動を長期に亘り継続。


<受賞者のひと言>
日韓でいろいろな問題が起こった時も、途絶えることなく続いているのが草の根交流の絆の強さです。これからも雨森芳洲先生の心を受け継ぎ、活動を続けて行きたいと思います。



日韓親善少年剣道交流会 (スポーツ)

受賞グループと代表者:伊万里市剣道少年団 (川久保 健児 剣道教士)

<活動内容>
大邸大学顧問の協力により20年前に釜山を訪問し、以来、隔年で小中高生の剣道交流会を相互に開催。武道を通じて青少年の健全育成を果たすと共に日本国有の武道の普及にも貢献。ホームステイ等の交流も併せて実施。

<推薦者などの評価>
20年間に亘り民間主導で継続されている自主的活動で、剣道を通じて人として守るべきマナーとエチケットの大切さを学び、国際理解の場となっている。

<受賞者のひと言>
過去20年間の間には政治的難局もありましたが、伊万里・有田地区の児らは李参平(韓国から日本に陶磁器を伝えた人間)の末裔であり、「あなた方が里帰りしてきたようなものです」と、剣道による青少年交流が韓日の人達から快く受け入れられました。




川崎・富川高校生フォーラム ハナ交流会 (教育・文化)


受賞グループと代表者:川崎・富川高校生 フォーラム・ハナ (サポーター代表 風巻 浩 教諭)

<活動内容>
川崎市と富岡市の高校生交流で、日本人・在日コリアン・韓国人の三者が一体となることをめざした活動を2000年から継続し、準備会議を経てインターネット会議、ホームステイ、フォーラム年を開催。

<推薦者等の評価>
日本人・在日コリアン・韓国人がひとつになるためのハナ交流会を通じて、生活文化の違いや共通点を学び、お互いが尊重できる環境づくりを果たしている。

<受賞者のひと言>
私たちの特徴のひとつとして在日コリアンの高校生たちが参加しており、韓国・日本・在日コリアンの三者の交流を行っています。過去のしがらみを乗り越えようとする彼らの熱き思いが、この活動を支えています。



日韓親善脳性麻痺障害者サッカー大会(スポーツ)


受賞グループと代表者:ゴムドゥリ・サラン会 (申 撫~ 会長)

<活動内容>
脳性麻痺障害者による青少年サッカー交流。日韓両国の互いの文化に触れながら、サッカーを通じて障害者の自立をめざし、多くの困難を克服して友好を深めている。将来はパラリンピック同時出場が目標。

<推薦者等の評価>
障害者サッカーという陽の当らない分野で20年以上の長年に亘って活動を支援・継続し、障害者に勇気と希望を与えている。


<受賞者のひと言>
この賞は私どもの選手達が、これまでの22年間一生懸命やってきた結果であり、私は代理にすぎません。非常に苦しい練習を重ねてきた選手達に希望を分けてくださった皆様に感謝します。





◆ 高円宮妃殿下のおことば ◆
 本日は高円宮記念日韓交流基金の顕彰式典にお集まりの皆様とお会いできますことを大変うれしく思います。特に日本のみならず、韓国からも青少年の草の根交流に携わる方々や、それを支援する企業や団体の皆様にお越し頂き、この式典が非常に意義深いものとなりました。
 殿下はワールドカップの行われた2002年の11月に亡くなられましたが、国と国との友好は人と人との交流が基本にあるというお考えをお持ちでした。こうした宮様のご遺志を受け、教育、文化、スポーツ分野での青少年交流事業の顕彰を通じて未来志向的な日韓関係の構築を目的とする高円宮記念日韓交流基金が、昨年12月に設立されたことは私ども関係者の共通の喜びでございます。
 本年が初年ということで一体どのような交流事業があって、その中で顕彰に値する事業が本当にあるのかなど、内心少し案じておりましたが、選考委員の皆様や事務局のご苦労のおかげで大変立派な交流活動が4件選考され、今日ここに表彰させていただくこととなりました。
 選考委員の皆様には、日韓を代表する有識者の方々で、お忙しい中ご協力くださいました選考委員の皆様、そして事務局の関係者の皆様には名誉総裁といたしまして、この場を借りて心より感謝申し上げます。
 授彰から漏れた案件にも立派な交流事業が多数あり、選考委員会での選考は難航したようですが、あくまで市民による草の根交流で一定期間長く継続していることなどが評価されて4件の交流事業の授彰が決まったとうかがっております。
 滋賀県の高月町で行われている芳洲の里青少年交流事業。佐賀県伊万里市で行われている日韓親善少年剣道交流事業、神奈川県川崎市で行われている川崎・富川高校生フォーラム・ハナ交流事業、韓国ソウルで行われている日韓親善脳性麻痺障害者サッカー交流事業ゴムドゥリ・サラン会には、今までのご活動に敬意を示し、今後のご活躍を期待しております。こうした活動が市民の皆さんの善意により、静かに続いてきたことに、私は強い感銘を受けました。
 国と国をつなぐためには、まず一人ひとりが仲良くなること。そして、相手に対して敬意を持つことです。
 日本と韓国はそれぞれ固有の文化と歴史をもっており、実際に互いの国を訪問し、人と接することから始めて、教育やスポーツを通じて相手の立場に立って考え、相互理解に至ることが国際交流の何よりの近道だと考えます。
 地道な草の根活動によって日本と韓国の人々の出会いの場が広がり、友好の輪が次第に大きくなっていくことを願って、私の式典に寄せる言葉といたします。
「高円宮記念日韓交流基金」顕彰式に寄せて
〜 日韓『草の根交流』の拡大願う 〜
高円宮妃久子殿下に伺う 


◇◇ 選考委員メッセージ ◇◇

◆「草の根に光を当てる意義」―― 小田島 雄志 東京大学 名誉教授
 選考過程で、日本と韓国の間で様々な草の根活動があることを知りました。この基金は社会の様々な分野で活動している人々や団体に光を当てて顕彰することに意義があると思います。昨年、日本の主な演劇賞を総なめにした日韓合作演劇「焼肉ドラゴン」の選考にも関わりましたが、社会の隅々で活動している人たちに焦点を当て、多くの人に理解してもらうことが大事だと感じました。この基金がスポーツ・芸術・文化など、社会のさまざまな分野で活動している人や団体を顕彰して、日韓交流に貢献されることを願います。







◆「刺激となり新たな交流を」―― 川淵 三郎 日本サッカー協会名誉会長
 2002年日韓ワールドカップが開催された時、高円宮殿下が日韓関係を「近くて遠い国から、近くて遠くない国になった」とお話しされたように、大会を機に両国の関係が深まりました。色々な国際交流がありますが、この委員会は草の根の交流を評価しようとしており、意義深いと思います。候補を4つに絞るのは難しい作業でしたが、ワールドカップの前からも交流が育まれていたことを知り、嬉しく思いました。この顕彰が多くの人々に知られ、それが刺激となって新しい交流を育んでいくことを願います。







◆「大きな輪をつくる契機に」―― 安西 祐一郎 慶應義塾 前塾長・学事顧問
 この基金は、高円宮妃久子殿下はじめ多くの方々の熱意と努力によって生まれた日韓両国を結ぶ大きな架け橋です。日韓ワールドカップの時に訪韓された高円宮殿下ご夫妻の温かいお気持ちがこの基金に表れています。第1回顕彰は、江戸時代の日朝外交に尽力した雨森芳州ゆかりの交流事業をはじめ、地域交流、高校生交流、障害者スポーツ交流などに努力して来られた4グループが受けますが、感銘を受けるものばかりでした。選に洩れた交流事業も顕彰に値するものが多く、選考に苦労しました。基金の活動がさらに大きな輪を作り、国境を越えた交流が進むことを願います。







◆「両殿下は両国民の心の絆」―― 陳 昌鉉 バイオリン製作者
 東洋経済日報の扉を開くたびに拝見する両殿下は、両国民の心の絆のような思いがします。顕彰を受ける団体、残念ながら選にもれた方達も両殿下のお心に沿うべく、今後も日韓文化交流の発展に精進されることを願っております。先日、高円宮妃殿下の赤坂御所に私共関係者全員がご招待を受け、激励のもてなしを受けました。妃殿下は私がバイオリン製作者と知って、御子様が愛用されているバイオリンをご用意され、私にコメントをお求めになりました。妃殿下は大変、子煩悩な方で心優しい母親の一面が印象に残りました。今後も日韓文化交流の一役を担っていきたいと思います。







◆「若者は隣国の歴史学ぼう」―― 張本 勲 元プロ野球選手・野球解説者
 皇族の方が日韓の友好交流を進めたいというお気持ちでおられることは喜ばしいことであり、われわれ韓民族としても大歓迎です。日韓の歴史には悲しいこともありましたが、これを機会に近くて近い関係になるよう努力していきたいと思います。両国間で多くの団体が交流していますが、さらに交流を深め、日韓のために頑張っていただきたいと願っています。若い世代に願いたいことは、日本人は韓国の歴史を、韓国人は日本の歴史を勉強してほしいと思います。基金が交流拡大のきっかけになると期待します。







◆「未来指向の日韓関係を促進」―― 姜 尚中 東京大学・情報学環 教授

 高円宮記念日韓交流基金が正式に発足したことは、韓日の新しい時代にとって、意義のあることだと確信しています。高円宮妃殿下には1年半ほど前にお会いしたことがありますが、韓日友好について深く考えていらっしゃったことが、印象に残っています。来年は、「韓国併合100年」という節目の年になります。基金の目的である「日韓パートナーシップに基づく教育・文化・スポーツを中心とした交流を顕彰・助成し、未来志向的な日韓関係を構築する」ため、この交流基金がさらに発展することを願ってやみません。