◆「未来指向の日韓関係を促進」―― 姜 尚中 東京大学・情報学環 教授
高円宮記念日韓交流基金が正式に発足したことは、韓日の新しい時代にとって、意義のあることだと確信しています。高円宮妃殿下には1年半ほど前にお会いしたことがありますが、韓日友好について深く考えていらっしゃったことが、印象に残っています。来年は、「韓国併合100年」という節目の年になります。基金の目的である「日韓パートナーシップに基づく教育・文化・スポーツを中心とした交流を顕彰・助成し、未来志向的な日韓関係を構築する」ため、この交流基金がさらに発展することを願ってやみません。

本日は高円宮記念日韓交流基金の顕彰式典にお集まりの皆様とお会いできますことを大変うれしく思います。特に日本のみならず、韓国からも青少年の草の根交流に携わる方々や、それを支援する企業や団体の皆様にお越し頂き、この式典が非常に意義深いものとなりました。
選考過程で、日本と韓国の間で様々な草の根活動があることを知りました。この基金は社会の様々な分野で活動している人々や団体に光を当てて顕彰することに意義があると思います。昨年、日本の主な演劇賞を総なめにした日韓合作演劇「焼肉ドラゴン」の選考にも関わりましたが、社会の隅々で活動している人たちに焦点を当て、多くの人に理解してもらうことが大事だと感じました。この基金がスポーツ・芸術・文化など、社会のさまざまな分野で活動している人や団体を顕彰して、日韓交流に貢献されることを願います。
2002年日韓ワールドカップが開催された時、高円宮殿下が日韓関係を「近くて遠い国から、近くて遠くない国になった」とお話しされたように、大会を機に両国の関係が深まりました。色々な国際交流がありますが、この委員会は草の根の交流を評価しようとしており、意義深いと思います。候補を4つに絞るのは難しい作業でしたが、ワールドカップの前からも交流が育まれていたことを知り、嬉しく思いました。この顕彰が多くの人々に知られ、それが刺激となって新しい交流を育んでいくことを願います。
この基金は、高円宮妃久子殿下はじめ多くの方々の熱意と努力によって生まれた日韓両国を結ぶ大きな架け橋です。日韓ワールドカップの時に訪韓された高円宮殿下ご夫妻の温かいお気持ちがこの基金に表れています。第1回顕彰は、江戸時代の日朝外交に尽力した雨森芳州ゆかりの交流事業をはじめ、地域交流、高校生交流、障害者スポーツ交流などに努力して来られた4グループが受けますが、感銘を受けるものばかりでした。選に洩れた交流事業も顕彰に値するものが多く、選考に苦労しました。基金の活動がさらに大きな輪を作り、国境を越えた交流が進むことを願います。
東洋経済日報の扉を開くたびに拝見する両殿下は、両国民の心の絆のような思いがします。顕彰を受ける団体、残念ながら選にもれた方達も両殿下のお心に沿うべく、今後も日韓文化交流の発展に精進されることを願っております。先日、高円宮妃殿下の赤坂御所に私共関係者全員がご招待を受け、激励のもてなしを受けました。妃殿下は私がバイオリン製作者と知って、御子様が愛用されているバイオリンをご用意され、私にコメントをお求めになりました。妃殿下は大変、子煩悩な方で心優しい母親の一面が印象に残りました。今後も日韓文化交流の一役を担っていきたいと思います。
皇族の方が日韓の友好交流を進めたいというお気持ちでおられることは喜ばしいことであり、われわれ韓民族としても大歓迎です。日韓の歴史には悲しいこともありましたが、これを機会に近くて近い関係になるよう努力していきたいと思います。両国間で多くの団体が交流していますが、さらに交流を深め、日韓のために頑張っていただきたいと願っています。若い世代に願いたいことは、日本人は韓国の歴史を、韓国人は日本の歴史を勉強してほしいと思います。基金が交流拡大のきっかけになると期待します。